ふっくらえびしんじょ椀
味わい深いえびしんじょをつくり、極上のだしと一緒に味わいます。
写真: 高橋 栄一
*1人分
*昆布を水に浸す時間、たらの水けをとる時間は除く。
材料
(4人分)
- 【だし】*8人分できる。
- ・水 2リットル
- *できれば、アルカリ性の強いしっかりした味の軟水がよい。
- ・昆布 (15cm四方) 2枚
- ・かつお節 (塊) 50g
- 【えびしんじょ】
- ・さいまきえび (有頭) 10匹(正味110g)
- *小型のくるまえび。
- 【卵の素(もと)】
- ・卵黄 1コ分
- ・塩 小さじ1/6(1g)
- ・サラダ油 80g
- 【すり身生地】
- ・たら (切り身) 100g
- ・塩 小さじ1/6(1g)
- ・つくね芋 小さじ1(5g)
- ・卵白 小さじ1/2(3g)
- ・くず粉 大さじ1(6g)
- *すり鉢とすりこ木ですり、ふるっておく。
- ・みりん 小さじ1弱(5g)
- ・ねぎ (白い部分) 適量
- ・さやいんげん 4本
- ・まつたけ 50g
- ・柚子(ゆず)の皮 (ごく小さいあられ切り) 適量
- ・塩
- ・うす口しょうゆ
つくり方
鍋に水と昆布を入れ、1~2時間浸す。たらは紙タオルで包んで30分間~1時間おく。
丁寧に、ゆっくりと昆布のうまみを引き出します。
鍋を火にかけて60℃にし、温度を保ちながら1時間半~2時間煮出す。
ゆっくりと煮出すことで、雑味のない【だし】がとれる。また、60℃は見た目では分からないので、温度計ではかり、確かめること。
ねぎは3cm長さに切り、縦に切り目を入れて芯を除く。せん切りにして3~5分間水にさらしてから水けをきる(白髪ねぎ)。さやいんげんは筋を取り、サッと塩ゆでして水にとって水けをきる。まつたけは紙タオルをぬらして汚れをふき、石づきを削る。
【卵の素】をつくる。ボウルに卵黄と塩を泡立て器で合わせる。サラダ油を少量ずつ加えながら、一定のリズムで分離しないように混ぜる。冷蔵庫で冷やす。
逆さまにしても落ちない程度の堅さが目安。サラダ油を少量ずつ分けて加え、そのつどマヨネーズ状になるまでよく混ぜる。しっかりした【卵の素】をつくることで、【えびしんじょ】がだれない。さらに冷蔵庫で冷やすと、成形しやすい。
えびは頭と背ワタを取り、殻をむいてブツ切りにする。
椀の主役は椀ダネ。存在感のある椀ダネをつくります。
【すり身生地】をつくる。たらは骨と皮を除いてから、1cm角に切ってフードプロセッサーに入れ、形がなくなるまでかくはんし、塩を加えて粘りが出るまでさらにかくはんする。
フードプロセッサーでかくはんすると、きめ細かな生地になり、なめらかな舌ざわりとフワッとした食感に。
【すり身生地】の残りの材料を順に入れ、そのつどかくはんし、全体がなめらかになるまでさらにかくはんする。最後に4の【卵の素】を加えてかくはんする。
バットにオーブン用の紙を敷く。7をボウルに移し5のえびを入れて手で混ぜ、4等分にする。空気を抜きながら丸形に成形しバットに置く。
両手で何度か行き来させながら空気を抜く。バットに置いたら、指を使って下から上に持ち上げる。
蒸気の上がった蒸し器に入れる。ふたを少しずらして蒸気の逃げ道をつくり、中火で15分間蒸す。
かつお節を蒸気の上がった蒸し器で中火で5分間蒸し、やや厚めに削る。
乾燥して堅いままでは薄くしか削れないので、蒸してから削る。
2の昆布を取り出して85~90℃に上げ、10のかつお節を入れ、アクを取る。1~2分間煮出してから、ボウルにざるを重ねて紙タオルを敷き、さらにこし器を重ねてこす。
こす前に色を確認し、よく【だし】が出ているなと思ったら手早く、もう少し出たほうがいいなと思ったら、ゆっくりとこす。しんじょが蒸し上がったときに、【だし】が仕上がっているのが理想です。
11の【だし】カップ1+1/4を小鍋に取り分け、塩少々、うす口しょうゆ小さじ1/2を加えて火にかける。3のまつたけは縦半分に包丁を入れ、さらに手で半分に裂いて、長ければ半分に切る。さやいんげんは、先をつなげたまま縦に切り目を入れる。
12が沸騰したらまつたけを入れ、火が通ったらさやいんげんを加えて温める。
11の【だし】カップ3を鍋に取り分け、塩小さじ1/4を加える。味をみて、さらに塩少々とうす口しょうゆ大さじ1/2で味を調える。
椀に【えびしんじょ】とまつたけを盛る。14の汁(吸い地)をはり、さやいんげん、白髪ねぎ、柚子(ゆず)の皮をあしらう。
椀ダネに吸い地をはり、季節のよそおいを添えて華やかに。
【プロの技法1】
◆椀ダネに応じただしの材料◆
奥田さんは、椀ダネに合わせて、だしの材料の水と昆布を吟味している。えびしんじょのようにボリュームのある椀ダネのときは、だしもそれを支えられるように、しっかりとした味の水と、濃いうまみの出る羅臼(らうす)昆布を使う。一方、はものように繊細な椀ダネのときは、まろやかな水と真昆布でだしをとる。また、かつお節は、脂が少なくすっきりとした味のだしがとれる背側を使う。
【プロの技法2】
◆「卵の素」と「蒸す」で椀ダネを主役に◆
「しんじょ」は、卵白と山芋を使うことが多いが、今回は「卵の素」でコクと濃厚なうまみを加え、ふっくらとした食感とともに椀ダネの存在感を出す。また、しんじょ生地をだしで煮るのではなく蒸すことで、余分な水分を吸わず、椀ダネとしての味わいも際立つ。
【プロの技法3】
◆かつお節はやや厚く削る◆
薄く削ったかつお節を使うと雑味なども出やすくなるが、やや厚く削ったものなら、質のよいうまみをとることができる。また重みで自然に沈むので、沈むまで待つ時間が少なくてすむ。
◎同じ種類の昆布やかつお節でもだしの味は毎回微妙に変わるので、必ず味をみて、煮出す時間を調整します。
このレシピをつくった人
奥田 透さん
東京・銀座を拠点に、パリにも展開する日本料理店の店主。その実力は国内外で高く評価され、正統派の日本料理が味わえる店として、訪れる人が絶えない。
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