老舗の親子丼
甘めの割り下とふわとろの卵が魅力の親子丼。卵は二階建てで、最初に回し入れた卵は、割り下の味となじみながら火が通り、ふんわり、しっかり、肉を支える土台に。さらに仕上げの卵を回しかけて、繊細な口溶けを生み出します。
写真: 野口 健志
*1人分
材料
(2人分)
- ・鶏もも肉 120g
- ・鶏むね肉 80g
- ・卵 (L) 4コ
- 【割り下】*つくりやすい分量(約2カップ使用)
- ・水 カップ1
- ・昆布
- *10×3cm
- ・みりん カップ1
- ・しょうゆ カップ1/2
- *なるべく鮮度のよいものを使う。
- ・鶏ガラスープ 適量
- *鶏ガラにねぎ、しょうがなどの香味野菜を加え、アクを取りながら弱火で長時間煮出したスープ。家庭では市販品でもよい。
- ・ご飯 (堅めに炊く) 400g
下ごしらえ・準備
割り下
1 昆布は分量の水に浸して30分間ほどおく。昆布を浸した水、みりん、しょうゆの割合は2:2:1と覚えるとよい。
2 すべての材料を鍋に入れて中火にかけ、静かにひと煮立ちしたら火から下ろす。グラグラ沸かさないこと。
3 熱いままだと水分が蒸発して味が濃くなるので、ボウルに移し、昆布を取り出し、氷水に当てて手早く冷ます。
つくり方
鶏肉は皮を取り、筋や脂肪を除いて小さめの一口大に切る。
筋肉質の鶏肉は筋が多いので、これを丁寧に取ることも臭みなく肉を味わうポイント。もも、むね、2種類の肉を使うのは、食べ飽きさせない心配り。
小鍋にもも肉を入れて割り下を少々加え、手でもみ込む。
割り下をカップ1~1+1/2ほど加えて弱めの中火にかける。煮立ったらアクを取り、2~3分間煮て、肉に七分(ぶ)~八分どおり火を通す。
肉がふっくらして丸みが出るくらいが目安。あとでまた加熱するので、火を通しすぎないこと。
ざるに上げ、煮汁の割り下はボウルにとっておく。
別の鍋に鶏ガラスープとむね肉を入れて弱めの中火にかける。3と同様に七分(ぶ)~八分どおり煮て引き上げる。
むね肉はスープで下煮し、もも肉と対照的に白く、あっさりと。
親子丼用の鍋に水を高さの半分ほど入れて中火で沸かし、湯を捨てる。卵はボウルに2コ割り入れてほぐし、注ぎやすい器に入れておく。
できるだけ短時間で仕上げるため、鍋に湯を沸かして予熱します。から炊きはしないこと。
6の鍋に、4でとっておいた煮汁の割り下40mlと、新しい割り下40mlを入れ、弱めの中火で温める。
鶏肉のだしが出た煮汁も合わせることで、程よいコクを加えます。
鍋の縁のほうが煮立ってきたら、4と5の肉を半量ずつ、均一に散らす。
再び煮立ったら、溶いた卵の3/4量ほどを中心から外側へ円を描くように回し入れる。ここであらかじめ丼にご飯200gをよそい、平らにならしておく。
どこを食べてもご飯と具のバランスが均一になるのが理想。専門店では、面が広く、底が平らな丼を使います。
卵が生の部分を玉じゃくしで少しすくい、煮立っている部分にかけながら手早く火を通す。
火の当たり具合によって卵の煮え加減が違いますが、鍋は動かさず定位置で。状態をよく観察し、煮えていない卵をすくって、煮えやすい部分に移します。
縁のほうがうっすら固まり、表面全体が半熟状になったら、残りの卵を回しかける。
すぐに火から下ろし、縁のほうからすべらせるようにして、9のご飯にのせる。
あとから加えた卵に火が通らないうちに、ここは素早く!
丼のふたをかぶせ、表面の卵を余熱でふんわりとさせる。もう1人分も6からと同様につくる。
食卓に運ばれ、ふたを取るタイミングで絶妙の半熟状に。
《これでプロの味:1》
○割り下について
親子丼用に、みりん、しょうゆ、うすめの昆布だしを合わせた下地。店で使用する割り下の配合は数字で表すことはできないが、その味に限りなく近く、誰にでもつくりやすいレシピ。2人分の親子丼には多めだが、煮物などにも幅広く利用できる。風味が落ちないように保存容器に移して冷蔵庫に入れ、翌日くらいに使いきって。
《これでプロの味:2》
○鶏肉について
親子丼の主材料は、ご飯と鶏肉、卵だけ。だからこそ、鶏肉は、信頼のおける小売店やデパートなどで、できるだけ良質なものを選ぶことが大切。のびのびと放し飼いされ、長期間かけて育てられた鶏の肉は、一般的な若鶏と比べると、その大きさや色、質感からも、いかに筋肉質で体格がよく、水分や脂肪が少なくてうまみが濃いかが分かる。
このレシピをつくった人
山田 耕之亮さん
江戸時代中期から続く老舗鶏料理店の8代目店主。伝統の味を守りつつ、時代に即したスタイルを取り入れ、元祖の名にふさわしい最高品質の親子丼を追究し続けている。
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